ニューハーフとセックス

ニューハーフ
コロナの影響でプロ野球の開幕が遅れ、開幕した今になっても入場制限は続いている。
重度の阪神タイガースファンの僕は、昨年までは年間50試合は生観戦していたものだ。
ぎゅうぎゅう詰めの観客席の中で好きな選手に声援を送ったり、ジェット風船飛ばしたり、選手のプレーに周りの観客たちと一喜一憂していたあの一体感は、もう二度と味わえないのかな、と寂しい思いが募るばかりである。僕はもちろん野球そのものは好きだが、球場のあの雰囲気がもっと好きだったのだ。
生観戦を通じて出会いもいろいろあった。思い出深いのはナギサさんだ。
彼女(彼?)とはファンクラブの合同観戦ツアーで懇意となった。カジュアルなジーンズ姿で薄手のシャツから盛り上がるバストがなかなかに扇情的であり、栗色の髪を後ろで結んだヘアースタイルも僕のタイプにズバリだった。そんな魅力的な存在が僕の横の席だったのである。さすがにドキドキした。
これは野球ばかり見ていてカノジョもできない僕に、野球の神様がもたらしてくれた出会いに違いない、と思い切って声をかけようとしたその時、彼女の歓声が聞こえた。
「かっとばせー!〇〇ー!」
野太い男声だった・・・。ナギサさんはニューハーフだったのである。
ナギサさんとは、その日の泊りのホテルも一緒であり、どちらから声をかけるまでもなく自然と僕たちは仲良くなった。胸は豊胸しているが、下はまだあるよ!といたずらっ子ぽく笑っていた。
そこから僕たちの交際は始まった。デートはもっぱら野球観戦だったが、タイガースが勝った日は祝杯代わりにセックスもした。ニューハーフとセックスである。ルックスが女性のナギサさんの股間に僕より太いバットがぶら下がっているのは違和感ではなくて官能的であった。ニューハーフとセックスと言っても、お互いのバットを握りあって楽しむコミニュケーション的なものだったが、僕は十分満足したし、タイガースファンと言う共通の趣味があるナギサさんとはそのままカレシカノジョとして付き合いたいと強く思ったものだ。
今、ナギサさんはどうしているのだろう?勤めていた店がコロナの影響で廃業を余儀なくされたところまでは聞いているが、その後は音信不通だ。
こうして、球場に通っていたら、いつかまたナギサさんと出会えるかな?とガランとした客席を見渡しながら思う次第である。
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